非上場株式の相続|評価・手続き・売却まで基礎から解説
「株券が出てきたけど、これって相続できるの?」その疑問にお答えします
亡くなった親の遺品整理をしていたら、見覚えのない会社名が書かれた株券や、証券会社ではなく会社から送られてきた配当の通知が見つかった——そんな経験をお持ちの方も少なくありません。
非上場株式は、上場株式と違って証券口座で確認できないため、気づかないまま手続きを忘れてしまうケースが多い相続財産です。 しかし放置すれば相続税の申告漏れや、後々のトラブルにつながりかねません。
この記事では、非上場株式の相続について「評価はどうするか」「手続きはどう進めるか」「売れない場合はどうするか」という3つのポイントを軸に、基礎からわかりやすく解説します。
非上場株式とは?まず基本を整理する
非上場株式とは、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場していない会社の株式のことです。中小企業・同族会社・家族経営の会社が発行していることが多く、相続財産として見落とされやすい資産のひとつです。
非上場株式が相続財産に含まれる主なケース:
- 被相続人が自ら経営していた会社(オーナー社長)の株式
- 親族や知人が経営する中小企業への出資
- 地域の信用金庫・信用組合への出資金(これも非上場株式に近い扱い)
- 昔に勤めていた会社からストックオプションとして取得した株式
品川・大田・港エリアのような都市部でも、ものづくり系・物流系の中小企業を経営されていた被相続人の方から、非上場株式が発見されるケースは珍しくありません。
非上場株式の相続税評価|3つの評価方式を理解しよう
非上場株式の評価は、上場株式のように市場価格がないため、国税庁の「財産評価基本通達」に定められた方法で算出します。これが相続税申告における最大の難関です。
評価方式の種類
相続する株主が「同族株主」か「少数株主」かによって、適用する評価方式が変わります。
| 評価方式 | 対象者 | 概要 |
|---|---|---|
| 原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式) | 同族株主(支配権を持つ大株主グループ) | 会社の規模や財務内容を反映した評価。一般的に高くなりやすい |
| 配当還元方式 | 少数株主(同族株主以外) | 年間配当額をベースにした評価。比較的低くなることが多い |
原則的評価方式の2つの柱
①類似業種比準方式:上場している同業種の株価を参考に、対象会社の「配当・利益・純資産」の3要素を加味して評価する方法。会社の規模(大・中・小・零細)によって適用割合が異なります。
②純資産価額方式:会社の資産を相続税評価額で洗い直し、負債を差し引いた純資産をベースに評価する方法。
実際には、会社の規模に応じてこれら2つを組み合わせて計算するケースが多く、税理士による専門的な評価計算が必要です。自力での計算はミスが生じやすいため、必ず専門家に依頼することをお勧めします。
⚠️ 評価額を誤ると過少申告加算税・延滞税が課される可能性があります。特に会社規模の判定・業種区分の選択は慎重に。
相続手続きの流れ|名義変更までのステップ
非上場株式の相続手続きは、上場株式の証券口座移管と異なり、会社との直接交渉・協力が必要になります。
STEP 1:株式の存在を確認する
遺品の中の株券、配当金の通知書・振込明細、会社からの郵便物、確定申告書の配当所得欄などから存在を把握します。株券不発行会社の場合は株券がなく、株主名簿への記載が権利の根拠になります。
STEP 2:会社に連絡し、株主名簿を確認する
故人が株主として記録されているかを確認します。会社側に連絡する際は、死亡の事実と相続人であることを証明する書類(戸籍謄本・遺産分割協議書など)の提出を求められるのが一般的です。
STEP 3:遺産分割協議を行う
複数の相続人がいる場合は、誰が株式を相続するかを遺産分割協議で決定します。株式は分割しにくい財産のため、誰が取得するかで揉めることも少なくありません。特に事業承継が絡む場合は、弁護士や税理士の関与が望ましいです。
STEP 4:株主名簿の書き換え(名義変更)を依頼する
会社に対して名義変更を請求します。必要書類は会社によって異なりますが、一般的には以下が必要です。
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 戸籍謄本・除籍謄本 | 被相続人と相続人の関係を証明 |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員の実印押印・印鑑証明書付き |
| 株券(発行されている場合) | 現物を会社に返却・交換 |
| 相続人の本人確認書類 | 運転免許証など |
STEP 5:相続税申告(10か月以内)
相続開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納付が必要です。非上場株式の評価額が申告額に直接影響するため、早めに税理士に相談することが重要です。
非上場株式は売れるの?出口戦略を考える
非上場株式は市場がないため、原則として自由に売却できません。これが相続人にとって最も頭を悩ませるポイントです。
主な出口の選択肢
| 方法 | 概要 | 注意点 |
|---|---|---|
| 会社(発行会社)への売却 | 会社に自己株式として買い取ってもらう | 会社側に買取義務はなく、交渉次第 |
| 他の株主への売却 | 既存の株主や後継者に譲渡 | 定款で譲渡制限がある場合は会社の承認が必要 |
| 第三者への売却(M&A) | 事業承継のニーズがある第三者へ | 専門的なマッチングが必要 |
| 会社の解散・清算 | 会社を閉じて残余財産を分配 | 他の株主・債権者の同意が必要なケースあり |
特に譲渡制限株式(定款に「株式の譲渡には取締役会等の承認が必要」と定められた株式)は、勝手に売却できないため注意が必要です。中小企業の株式の多くはこのタイプです。
会社側が買取を拒否したり、株価の折り合いがつかないケースも多く、弁護士・税理士を交えた交渉が必要になる場合があります。
放置するとどうなる?早めに動くべき理由
非上場株式を「面倒だから」と放置すると、以下のリスクが生じます。
- 相続税の申告漏れ:財産として申告義務があります。発覚した場合は延滞税・加算税が課される可能性があります
- 議決権行使の問題:株主として会社の重要事項に関わる権利があるにもかかわらず、行使できないまま不利益を受けることがあります
- 会社側が株式を処理してしまう:相続人不明のまま長期間経過すると、会社側が一定の手続きを経て株式を取得するケースもあります
- 相続人間トラブルの長期化:遺産分割協議が未了のまま放置されると、後の世代に問題が先送りされます
非上場株式の相続は、早めの専門家相談が肝心です
非上場株式の相続は、評価・名義変更・売却・税務申告と、複数の専門分野にまたがる複雑な手続きが必要です。ひとつの窓口で税理士・司法書士・弁護士と連携して対応できる体制があると、スムーズに進められます。
Bushizo相続相談室(品川広域センター) では、宅地建物取引士が相続財産全体のコーディネートを行い、非上場株式を含む相続案件を連携専門家とともにワンストップでサポートします。「何から始めればいいかわからない」という段階からでもお気軽にご相談ください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 非上場株式は相続税の申告書にどう記載すればいいですか?
A. 財産評価基本通達に基づいて算出した評価額を、相続税申告書の「その他の財産」欄に記載するのが一般的です。評価計算は税理士が行うことがほとんどで、会社の決算書類が必要になります。まずは被相続人が株主であることを示す書類と会社の財務資料を揃えるところから始めましょう。
Q2. 会社が買い取りを拒否した場合、どうすればいいですか?
A. 譲渡制限株式の場合、会社が承認を拒否したときは、会社または指定する買取人が「相当な価格」で買い取る義務が生じます(会社法第140条等)。ただし価格交渉が難航するケースも多く、最終的には裁判所が価格を決定する手続き(株価決定申立て)に進む場合もあります。弁護士への相談をお勧めします。
Q3. 相続した非上場株式を相続放棄することはできますか?
A. 相続放棄は相続財産の全部を放棄するものであり、非上場株式だけを選んで放棄することはできません。相続放棄をすると、不動産・預貯金・負債を含むすべての財産を放棄することになります。非上場株式の評価額が高い場合でも、他の財産との兼ね合いで判断する必要があるため、まず専門家に財産全体の評価を確認してもらうことが重要です。
本記事は一般的な情報提供を目的として作成しており、特定の法律・税務上のアドバイスを構成するものではありません。個別の状況については、税理士・弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。