相続と後見人の関係をわかりやすく解説|手続きの流れと注意点
「相続の手続きを進めようとしたら、認知症の親族がいて先に進められない」「後見人って何?相続にどう関係するの?」——こうした疑問を抱えて検索された方は少なくないはずです。
結論から言うと、相続人や被相続人が判断能力を欠いている場合、成年後見人の選任が相続手続きの前提として必要になることがあります。 後見人の存在を知らずに手続きを進めると、後々トラブルになるケースもあるため、早めに全体像を把握しておくことが大切です。
この記事では「相続と後見人」の関係を基礎からわかりやすく解説し、どのタイミングで後見人が必要になるのか、費用や期間の目安、そして生前対策との比較まで丁寧にご説明します。
成年後見制度とは?相続との関係をまず整理しよう
成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が不十分な方(以下「本人」)の財産や権利を守るために、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。
相続との関係では、主に次の2つの場面で問題になります。
-
被相続人(亡くなった方)が生前に認知症だった場合
生前の財産管理・契約行為の有効性が問われることがあります。また、本人が遺言を作成できる状態だったかどうかも論点になります。 -
相続人の中に判断能力が不十分な方がいる場合
遺産分割協議は相続人全員が「有効な意思表示」をしなければなりません。認知症などで判断能力がない相続人は、自ら協議に参加できないため、後見人を選任してもらう必要があります。
遺産分割協議に後見人が必要になるケースとは
遺産分割協議は、相続人全員が合意して初めて成立します。しかし、相続人の一人が重度の認知症を抱えている場合、その方は法的に有効な意思表示ができないと判断されます。この状態で協議を行っても、法律上は無効となる可能性が高いのです。
具体的なケース例
-
ケース①:母が亡くなり、相続人は父(認知症)と子ども2人
父は相続人ですが、判断能力がないため遺産分割協議に参加できません。子どもたちだけで話し合って署名・捺印をもらっても無効です。家庭裁判所に後見人(または保佐人)の申立てをして、後見人が父を代理して協議に参加する必要があります。 -
ケース②:相続人の一人が重度の知的障害を持つ兄弟姉妹
同様に、その方の代わりに後見人が遺産分割協議に参加します。 -
ケース③:品川区内の実家を相続したいが、同居の兄が認知症
不動産の名義変更(相続登記)には遺産分割協議書が必要です。兄に後見人を選任しないと、2024年4月から義務化された相続登記の期限(相続を知った日から3年以内)に間に合わない恐れがあります。
後見人申立ての流れと費用・期間の目安
後見人の選任は家庭裁判所への申立てから始まります。一般的な流れと目安は以下のとおりです。
申立ての流れ
- 申立書類の準備(本人の戸籍・診断書・財産目録など)
- 家庭裁判所へ申立て(本人の住所地を管轄する家裁)
- 審査・調査(面接・医師の鑑定が必要な場合も)
- 後見人の選任審判
- 後見登記・業務開始
費用と期間の目安
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 申立て費用(収入印紙・切手) | 1万円程度 |
| 医師の診断書費用 | 5,000〜1万円程度 |
| 医師による鑑定費用(必要な場合) | 5〜10万円程度 |
| 司法書士・弁護士への依頼費用 | 10〜20万円程度(ケースによります) |
| 申立てから選任までの期間 | 概ね2〜4か月程度 |
| 選任後の後見人報酬(月額) | 2〜6万円程度(裁判所が決定) |
※費用・期間は家庭裁判所や個別事情によって異なります。専門家にご確認ください。
誰が後見人になれるの?
親族が申立てをしても、後見人として選任されるのは必ずしも申立人(親族)とは限りません。 財産が多い場合や親族間に利害対立がある場合(=遺産分割協議のように後見人自身も相続人の場合など)、家庭裁判所が司法書士・弁護士などの専門職後見人を選任することがあります。
また、後見制度は本人が亡くなるまで続くのが原則です。相続手続きのためだけに一時的に利用するものではない、という点は重要なポイントです。
任意後見制度と遺言——生前対策としての比較
「将来、自分が認知症になったとき家族が困らないようにしたい」という生前対策として、後見制度と遺言を組み合わせることが有効です。
| 制度 | 特徴 | タイミング |
|---|---|---|
| 法定後見制度 | 判断能力が低下してから家裁が後見人を選任 | 判断能力喪失後 |
| 任意後見制度 | 元気なうちに自分で後見人を指定・契約 | 判断能力があるうち |
| 遺言(公正証書) | 相続発生後の財産の行き先を指定 | 元気なうちに作成 |
| 家族信託 | 信頼できる家族に財産管理を委託 | 元気なうちに設計 |
任意後見制度のメリット
- 自分が信頼できる人(家族・友人など)を後見人に指定できる
- 財産管理の範囲や方針をある程度自分で決められる
- 認知症になった後に「知らない専門職が財産を管理する」という事態を防ぎやすい
遺言と組み合わせることの重要性
任意後見契約だけでは、死後の財産の行き先は決まりません。遺言と任意後見をセットで準備しておくことで、「生きている間の財産管理」と「亡くなった後の遺産分割」の両方をカバーできます。
2024年からは生前贈与の相続財産への加算期間が3年から7年に延長されました(2024年1月1日以降の贈与分から段階的に適用)。早めの生前対策が、税負担の軽減にもつながります。
後見人制度を使わずに済む方法はある?
後見人制度は「途中でやめられない」「コストがかかり続ける」というデメリットもあり、できれば使わずに済む方法を探したい方も多いです。一般的に有効とされる対策を整理します。
事前に備えておける対策
-
公正証書遺言を作成しておく
相続人間の争いを防ぎ、遺産分割協議が不要になるケースも。 -
家族信託(民事信託)を組む
認知症発症後も、信託契約に基づいて家族が財産管理・処分できます。後見制度の代替手段として注目されています。 -
任意後見契約を元気なうちに締結
自分の意思で後見人を選べる唯一のタイミングです。
ただし、これらはすでに判断能力が低下してしまった後には利用できません。 本人が意思能力を持っているうちに動くことが、最大のポイントです。
相続と後見人に関することは、早めに専門家へ
「うちの親はまだ大丈夫」と思っていても、認知症の進行は突然加速することがあります。相続人の中に判断能力に不安がある方がいる場合、早めに専門家へ相談することが、家族全員の負担を最小限にする近道です。
Bushizo相続相談室(品川広域センター)では、宅地建物取引士を中心に、司法書士・税理士・弁護士と連携したワンストップ対応を行っています。「まだ売るかどうかも決まっていない」「相続登記の期限が気になるけど後見人が必要かもしれない」そんな段階からでも、気軽にご相談ください。売却を急かすことは一切ありません。
無料相談はこちら → お問い合わせフォーム
お電話でのご相談:050-5527-6414
よくある質問
Q1. 相続手続きの途中で相続人の一人が認知症だとわかりました。どうすればいいですか?
A. 遺産分割協議を進める前に、その方の後見人(または保佐人・補助人)を家庭裁判所に申立てる必要があります。後見人が選任されてから、その後見人が本人の代わりに協議に参加します。まずは司法書士や弁護士にご相談ください。
Q2. 後見人に親族が選ばれなかった場合、財産の管理はどうなりますか?
A. 裁判所が選任した専門職後見人(司法書士・弁護士など)が、本人の利益のために財産を管理します。後見人は定期的に家庭裁判所へ報告する義務があり、不正な流用を防ぐ仕組みが整っています。一方で、後見人への報酬は本人の財産から支払われます。
Q3. 任意後見と家族信託は何が違いますか?どちらがいいですか?
A. 任意後見は「本人の代わりに意思決定する権限を与える制度」で、家庭裁判所の監督が入ります。家族信託は「特定の財産の管理・処分権を家族に移す契約」で、裁判所の関与なく柔軟に運用できます。どちらが適切かは財産の種類・家族構成・目的によって異なります。一概にどちらがよいとは言えないため、専門家への相談をお勧めします。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的として作成しており、特定の法律・税務上のアドバイスを提供するものではありません。個別の状況については、司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。