相続放棄しても空き家の管理責任は残る|2023年民法改正後の注意点
「相続放棄すれば全部終わり」は危険な誤解です
「遠方に古い実家があるけれど、修繕費も管理の手間も負担できない。いっそ相続放棄してしまえば楽になるのでは…」
そう考えて相談に来られる方は、品川・大田・港エリアでも少なくありません。都心部でも昭和築の一戸建てが空き家になるケースは増えており、相続放棄は確かに有力な選択肢のひとつです。
しかし、「相続放棄=空き家との完全な縁切り」ではありません。
2023年(令和5年)の民法改正により、相続放棄をした後の管理義務のルールが明文化されました。放棄さえすれば何もしなくていい、というわけにはいかないのです。
この記事では、相続放棄した後に空き家はどうなるのか、誰が管理責任を負うのか、そして具体的にどう動けばよいのかを整理してお伝えします。
相続放棄とは何か:基本をおさらい
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産・負債のすべてを引き継がないと家庭裁判所に申述する手続きです。
相続放棄の主なポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申述先 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 期限 | 相続の開始を知った日から3か月以内(熟慮期間) |
| 効果 | 最初から相続人でなかったとみなされる |
| 撤回 | 原則として撤回不可 |
| 費用 | 収入印紙800円+郵便切手代程度(弁護士・司法書士費用は別途) |
相続放棄が受理されると、その人は「最初から相続人ではなかった」扱いになります。プラスの財産(不動産・預金など)もマイナスの財産(借金など)も、一切引き継ぎません。
空き家が負の遺産になりそうなとき、放棄を選ぶのは合理的な判断です。ただし、後述するように「放棄後の管理」は別の問題として残ります。
2023年民法改正で何が変わったか
2023年(令和5年)4月1日施行の改正民法により、相続放棄後の管理義務が大幅に緩和・明確化されました。
改正前と改正後の比較
| 比較項目 | 改正前(旧民法940条) | 改正後(新民法940条) |
|---|---|---|
| 義務を負う人 | 相続放棄した者 | 相続放棄した者(ただし要件が限定) |
| 管理の範囲 | 次の相続人が管理できるまで(曖昧) | 現に占有している場合に限定 |
| 義務の内容 | 「自己の財産におけるのと同一の注意」 | 保存に必要な行為のみ(善管注意義務より軽減) |
| 義務の終期 | 次の相続人が管理できるまで | 相続財産清算人への引渡しまで |
ポイントは「現に占有している場合」という限定です。
改正後は、相続放棄した人が実際にその空き家を占有・使用していた場合のみ、次の管理主体(他の相続人や相続財産清算人)が管理を開始できるまでの間、「保存に必要な行為」を行う義務があるとされています。
遠方に住んでおり、実家を一切使っていなかった場合などは、一般的にはこの管理義務の対象外になる可能性があります。ただし、個別の事情によって判断は異なりますので、必ず専門家にご確認ください。
空き家を放棄したあと、その家はどうなるのか
相続放棄をすると、その不動産は「相続財産」として宙に浮いた状態になります。次の流れを把握しておきましょう。
ステップ1:後順位の相続人へ
第一順位(子)が全員放棄すると、相続権は第二順位(父母・祖父母)へ移り、さらに全員が放棄すれば第三順位(兄弟姉妹)へ移ります。
一人だけ放棄しても、他の相続人がいれば問題は解決しません。
ステップ2:全員が放棄した場合は相続財産法人へ
相続人全員が放棄すると、遺産は「相続財産法人」となり、利害関係人または検察官の申立てにより相続財産清算人が選任されます(民法952条)。
ステップ3:最終的に国庫帰属か相続土地国庫帰属制度の活用
清算手続きの結果、引受け手がなければ国(国庫)に帰属します。また、2023年4月から始まった**「相続土地国庫帰属制度」**を使えば、一定の要件を満たす土地を国に引き取ってもらうことも可能です(建物付きは原則対象外、負担金あり)。
注意:2024年4月から相続登記が義務化
2024年(令和6年)4月1日から、不動産の相続登記が義務化されました。相続(遺贈も含む)で取得した不動産について、取得を知った日から3年以内に登記しなければ10万円以下の過料の対象となります。
相続放棄を検討するなら、この登記義務との関係も踏まえて早めに動くことが重要です。放棄した場合は登記義務の対象にはなりませんが、放棄の期限(3か月)と登記の期限(3年)を混同しないよう注意しましょう。
放棄しても残りうるリスク:損害賠償・近隣トラブル
管理義務の話とは別に、現実的なリスクも押さえておく必要があります。
空き家の倒壊・飛散による第三者への損害
民法717条(工作物責任)では、建物の設置・保存の瑕疵によって他人に損害を与えた場合、占有者または所有者が賠償責任を負うと定めています。
相続放棄をしても、登記上の名義がそのままであったり、実質的に管理していた事実がある場合、責任を問われるケースがないとは言えません。
品川・大田エリアのような都市部では、空き家が隣接する建物や通行人に影響を与えるリスクが高く、行政から「特定空き家」に指定されると勧告・命令・代執行の対象にもなります(空き家特措法)。
固定資産税の請求
相続放棄をしても、市区町村から固定資産税の納税通知が届くことがあります。これは登記名義や課税台帳の名義が変わっていないためです。実際には相続放棄した者が納税義務を負うわけではありませんが、無視していると督促が続く場合もあるため、役所や専門家に状況を説明して対応することをお勧めします。
相続放棄を検討するときのチェックリスト
放棄を決断する前に、以下を必ず確認しましょう。
| チェック項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 熟慮期間の確認 | 相続開始を知った日から3か月以内か |
| 他の相続人の意向 | 全員が放棄する方向か、引き受ける人はいるか |
| 負債の有無 | プラスの財産より借金が多いか |
| 不動産の価値 | 売却・活用すればプラスになる可能性はないか |
| 相続登記義務との整合 | 3年以内の登記義務と放棄の期限を混同していないか |
| 放棄後の管理義務 | 現に占有しているかどうか |
| 相続財産清算人の申立て | 全員放棄後、清算が必要な場合の費用負担は誰がするか |
「放棄か、活用か、売却か」の判断は、不動産の状態・立地・市場価値・相続人の関係によって大きく異なります。
「どうせ売れないから放棄しよう」と思っていた空き家が、実は売却できるケースも少なくありません。特に品川・大田・港エリアは都心へのアクセスが良く、更地や古家付き土地として需要がある場合があります。放棄を決める前に、不動産の査定や専門家への相談をお勧めします。
迷ったら、まずは無料相談を
「相続放棄すべきか、それとも売却・活用できるのか判断がつかない」「親が亡くなったが、実家の空き家をどう処理すればいいかわからない」
そんなお悩みは、Bushizo相続相談室(品川広域センター)にお気軽にご相談ください。宅地建物取引士が窓口となり、司法書士・税理士・弁護士と連携したワンストップでサポートいたします。売却を急かすことなく、お客様の状況に合った最善策をご一緒に考えます。
📞 無料相談はこちら → お問い合わせフォーム / 050-5527-6414
品川・大田・港エリアはもちろん、全国の相続不動産に対応しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続放棄をすれば、空き家の固定資産税も払わなくてよくなりますか?
A. 相続放棄が受理されると、法律上はその不動産の相続人ではなくなるため、原則として固定資産税の納税義務は負いません。ただし、市区町村の課税台帳の名義変更には別途手続きが必要です。放棄後も納税通知が届く場合は、放棄の事実を役所に申し出て対応を確認しましょう。
Q2. 相続放棄の期限(3か月)を過ぎてしまいました。もう放棄できませんか?
A. 原則として3か月の熟慮期間を過ぎると放棄はできません。ただし、相続財産の存在を知らなかった場合など、「相続の開始を知った時」の起算点が問題になるケースもあります。期限が過ぎていると思っても諦めず、まず弁護士や司法書士にご相談ください。
Q3. 兄弟の中で自分だけ相続放棄しました。空き家の管理はどうなりますか?
A. あなたが放棄すると、その相続分は他の相続人(兄弟姉妹など)に帰属します。空き家の管理責任は、引き続き相続人となっている方が負います。ただし、あなたが現にその空き家を占有していた場合、改正民法940条に基づき、他の相続人が管理を開始できるまでの間、保存に必要な行為を行う義務が生じることがあります。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法務・税務・不動産に関するアドバイスを提供するものではありません。具体的な判断については、司法書士・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。