手続き全般

国際相続の手続きを徹底解説|準拠法・税金・登記の流れ

Bushizo相続相談室(宅地建物取引士)
国際相続の手続きを徹底解説|準拠法・税金・登記の流れ

「どこの国の法律が適用されるの?」国際相続で最初に直面する壁

「父が亡くなったが、父はアメリカ国籍を取得していた」「相続人の一人がオーストラリアに永住している」「日本にある実家を、海外在住の兄弟と相続したい」——こうした相談は、品川・大田・港エリアの相談窓口にも、決して珍しくない件数で寄せられています。

羽田空港に近い城南エリアは国際的なビジネスパーソンが多く居住しており、国際相続は決して”遠い話”ではありません。

結論から言えば、国際相続には「どこの国の法律で手続きを進めるか」という準拠法の問題が最初に立ちはだかります。 ここさえ押さえれば、その後の手続きの全体像がつかみやすくなります。この記事では、国際相続の基本から税金・登記の実務的な注意点まで、順を追って解説します。


国際相続の「準拠法」とは何か

日本の国際私法が適用される

国際相続とは、被相続人(亡くなった方)または相続人のどちらかが外国籍・外国在住である相続のことを指します。このとき、「日本法」「相手国の法律」どちらが適用されるかによって、法定相続人の範囲や相続分が大きく変わる場合があります。

日本では**「法の適用に関する通則法」(通則法)第36条**が基本ルールを定めており、相続は被相続人の本国法によるとされています。

ケース適用される法律(原則)
被相続人が日本国籍日本法
被相続人がアメリカ国籍アメリカ法(州法)
被相続人がドイツ国籍ドイツ法

ただし、相手国の国際私法が「日本法によれ」と反致(はんち)してくる場合には、日本法が適用されることもあります(通則法第41条)。反致が認められるかどうかは国によって異なるため、専門家への確認が必須です。

EU加盟国との違い

EUでは2015年より「EU相続規則(No.650/2012)」が施行されており、原則として被相続人の常居所地法が適用されます。日本の通則法と考え方が異なるため、EU加盟国の方が関係する相続では注意が必要です。


日本にある不動産・財産への影響

不動産は「所在地法」が並行適用される

不動産の相続については、準拠法だけでなく**財産が所在する国の法律(所在地法)**も絡んできます。日本にある不動産を外国籍の方が相続する場合、登記手続き自体は日本法(不動産登記法)に従います。

また、2024年4月から相続登記が義務化されました。相続人が海外在住であっても、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。義務を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

相続登記に必要な書類(外国籍の場合)

外国籍の被相続人や相続人が絡む場合、通常の相続登記に加えて以下の書類が追加で必要になるケースがあります。

必要書類内容・注意点
外国語の証明書出生証明・婚姻証明・死亡証明など(公証・翻訳が必要)
アポスティーユ または 領事認証ハーグ条約締結国はアポスティーユで可
日本語翻訳文翻訳者の氏名・住所の記載が必要
在外公館発行の証明書国によって内容が異なる

書類の取得には数週間〜数ヶ月かかることもあるため、早めに準備を始めることが重要です。


国際相続にかかる税金——日本の相続税はかかる?

相続税の課税範囲

日本の相続税が課税されるかどうかは、**被相続人・相続人それぞれの国籍と住所(居住形態)**によって判断されます。2017年の税制改正以降、ルールが整理されており、大まかには以下のとおりです。

被相続人の状況相続人の状況課税範囲
日本居住(国籍問わず)日本居住全世界財産
日本居住(国籍問わず)海外居住(日本国籍・10年超)全世界財産
海外居住・外国籍日本居住日本国内財産のみ(原則)
海外居住・外国籍海外居住・外国籍日本国内財産のみ(原則)

※居住年数・ビザの種類などによって判定が変わるケースがあります。必ず税理士に確認を。

二重課税を防ぐ「外国税額控除」

日本と相手国の双方で相続税が課税される場合、外国税額控除制度を利用することで二重課税を一定程度緩和できます。ただし、相続税条約を締結している国は限られており、日本はアメリカ・フランスなど一部の国としか条約を結んでいません(2024年時点)。

2024年からの生前贈与加算7年ルールにも注意

2024年1月以降の贈与から、相続開始前7年以内の生前贈与が相続財産に加算される新ルールが適用されています(従来は3年)。海外在住の相続人への贈与も、日本の贈与税・相続税の対象になり得るため、国際的な資産移転を検討している方は注意が必要です。


遺言書の作り方と国際的な効力

日本の遺言書は海外で有効か

日本で作成した遺言書は、必ずしも外国でそのまま有効とは認められません。国によっては公正証書遺言の形式が求められたり、現地の家庭裁判所に相当する機関での手続きが必要になったりします。

一方、日本が加盟している**「遺言の方式の準拠法に関する条約」(ハーグ条約1961年)**により、一定の条件を満たす遺言は複数国で有効と認められる場合があります。

国際相続における遺言書作成のポイント

  • 日本語と現地語の両方で作成しておくと手続きがスムーズになるケースがある
  • 公正証書遺言は証拠力が高く、国際相続では特に有効
  • 外国財産については現地の弁護士・公証人に相談して別途遺言書を作成することも選択肢
  • 遺言執行者を指定しておくと、相続人が海外在住でも手続きが進めやすい

国際相続の手続きの流れと専門家の役割

国際相続は複数の国の法律・手続きが絡み合うため、日本国内の通常の相続よりも関与する専門家の数が多くなるのが特徴です。

① 被相続人の国籍・住所・財産所在地を確認 ↓ ② 適用される準拠法を確認(司法書士・弁護士) ↓ ③ 相続税の課税範囲を確認(税理士) ↓ ④ 外国書類の取得・翻訳・認証 ↓ ⑤ 遺産分割協議(必要に応じて現地弁護士と連携) ↓ ⑥ 日本国内の相続登記・口座解約・不動産売却等 ↓ ⑦ 相続税申告(相続開始を知った日から10ヶ月以内)

特に**相続税の申告期限(10ヶ月)**は、書類収集に時間がかかる国際相続では特に切迫しやすいため、被相続人が亡くなった直後から動き始めることを強くおすすめします。

専門家別の対応範囲

専門家主な対応内容
司法書士相続登記、戸籍収集、遺言書検認
税理士相続税申告、外国税額控除、贈与税対応
弁護士準拠法の判断、遺産分割交渉、国際的な紛争
宅建士不動産の評価・売却・活用相談
現地弁護士外国財産の名義変更・手続き

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よくある質問(Q&A)

Q1. 外国籍の父が亡くなりました。日本の相続税はかかりますか?

A. 被相続人(お父様)の日本国内居住の有無、相続人の居住地・国籍などによって課税範囲が異なります。日本国内に不動産などの財産がある場合、少なくともその財産については日本の相続税の対象となる可能性があります。詳細は税理士への確認が必要です。

Q2. 相続人の一人が海外在住で連絡が取りにくい場合、相続登記は進められますか?

A. 遺産分割協議には原則として相続人全員の合意が必要です。ただし、海外在住の方にはメール・ビデオ通話等での意思確認や、現地の公証機関を通じた書類作成が可能なケースもあります。また、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法もあります。司法書士・弁護士にご相談ください。

Q3. 親が日本とアメリカの二重国籍でした。どちらの法律が適用されますか?

A. 日本の通則法では、二重国籍の場合は常居所(生活の本拠地)がある国の法律を本国法とすることが多いとされています(通則法第38条)。ただし判断は個別の事情によるため、国際相続を専門とする弁護士への相談を強くおすすめします。


免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の個人・案件に対する法律・税務・登記上のアドバイスを行うものではありません。実際の手続きや判断については、司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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