手続き全般

父が亡くなり母が相続|手続きの流れと注意点を宅建士が解説

Bushizo相続相談室(宅地建物取引士)
父が亡くなり母が相続|手続きの流れと注意点を宅建士が解説

父が亡くなり、母はこれから何をすればいい?

「父が急に亡くなって、何から手をつければいいのかわからない」「母が全部相続するつもりだけど、手続きは複雑そうで不安」――そんな気持ちでこのページを開いた方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、配偶者(お母様)が相続する場合、法定相続分に従えば比較的スムーズに進むケースが多い一方、不動産の名義変更・税申告・二次相続対策は早めに動く必要があります。

この記事では、父が亡くなり母が相続する場合の手続きの流れを、期限・費用・税金の観点から基礎的にわかりやすく整理します。専門的な判断が必要な部分は「専門家に確認を」と明記しますので、まずは全体像を把握するための参考にしてください。


母(配偶者)の法定相続分はどのくらい?

まず相続人の範囲と取り分(法定相続分)を確認しましょう。

配偶者(母)は常に相続人になります。誰と共同相続人になるかによって、法定相続分が変わります。

共同相続人母(配偶者)の法定相続分その他の相続人の法定相続分
子ども(1人以上)1/2残り1/2を子どもで均等分割
父の両親(直系尊属)2/3残り1/3を直系尊属で均等分割
父の兄弟姉妹3/4残り1/4を兄弟姉妹で均等分割
配偶者のみ全額

最もよくあるケースは「母+子ども」の組み合わせです。 この場合、法律上は母1/2・子ども全員で1/2が原則ですが、遺産分割協議で全員が合意すれば「母が全部相続する」ことも可能です。

ポイント: 法定相続分はあくまで「目安」であり、相続人全員が合意した遺産分割協議書があれば、割合は自由に決められます。


手続きの流れと期限:やること一覧

相続手続きには期限があるものが複数あります。見落とすと損をしたり、ペナルティが発生したりするので注意が必要です。

① 死亡届・葬儀(7日以内)

死亡診断書を受け取ったら、市区町村役場に死亡届を7日以内に提出します。

② 遺言書の確認(早めに)

自筆証書遺言が見つかった場合、家庭裁判所の検認手続きが必要です(公正証書遺言は不要)。2020年から法務局での保管制度もあるため、父が利用していた可能性も確認しましょう。

③ 相続放棄・限定承認(3か月以内)

相続を放棄したい場合や、借金の有無が不明な場合は、相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申述が必要です。期限を過ぎると原則として単純承認(プラスもマイナスも全部引き継ぐ)とみなされます。

④ 準確定申告(4か月以内)

父が生前に事業収入・不動産賃貸収入・年金収入などがあった場合、相続人が代わりに準確定申告を4か月以内に行う必要があります。

⑤ 遺産分割協議と相続税申告(10か月以内)

相続税の申告・納付は死亡日の翌日から10か月以内です。遺産分割協議書の作成もこの期限までに整えることが望ましいです。

⑥ 不動産の相続登記(3年以内・義務化)

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。 相続により不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に登記申請しなければなりません(正当な理由なく放置すると10万円以下の過料の対象)。過去の未登記物件も対象になるため、実家や土地を長年放置している場合は早急に対応が必要です。


母が相続する場合の相続税:配偶者控除を正しく理解する

配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは

配偶者(母)が相続する場合、**「配偶者の税額軽減」**という特例があります。

配偶者が取得した財産が、①1億6,000万円または②配偶者の法定相続分のいずれか大きい金額までは、相続税がかからない。

つまり、遺産総額が1億6,000万円以下であれば、母が全額相続しても相続税はゼロになるケースが一般的です。

ただし、この特例を受けるためには相続税の申告書を必ず提出する必要があります(税額がゼロでも申告は必須)。

二次相続リスクを忘れずに

配偶者控除は非常に強力ですが、「母が全部相続→母が亡くなったときの二次相続」では、配偶者控除が使えません。母から子どもへの相続(二次相続)では、一般的に税負担が重くなる傾向があります。

視点一次相続(父→母)二次相続(母→子)
配偶者控除使える使えない
基礎控除3,000万+600万×法定相続人数3,000万+600万×法定相続人数(人数が減る)
税負担の傾向軽くなりやすい重くなりやすい

母が全財産を相続することが必ずしもベストとは限りません。 二次相続を含めた全体のシミュレーションを税理士に依頼することをお勧めします。

生前贈与加算の7年ルール(2024年以降の改正)

2024年1月1日以降の贈与から、相続前の生前贈与加算期間が3年から7年に延長されました。父から子どもや孫への贈与があった場合、この期間内の贈与は相続財産に持ち戻されるケースがあります(ただし段階的に移行)。すでに行った贈与の取り扱いについては専門家にご確認ください。


実家・不動産が含まれる場合の注意点

相続登記は「早めが正義」

前述のとおり、2024年4月から相続登記は義務化されました。品川・大田・港エリアなど城南地区の一戸建て・マンション・土地を父名義のまま放置しておくと、売却・賃貸・担保設定ができず、家族が困る場面が増えます。

「小規模宅地等の特例」の活用を検討

亡くなった方が住んでいた自宅(特定居住用宅地等)については、一定の要件を満たせば土地の評価額が最大80%減額される「小規模宅地等の特例」が適用できます。母が引き続き自宅に住む場合は要件を満たしやすいですが、別居の子どもが相続する場合は要件が厳しくなります。

売却・活用・そのままか、焦らず判断を

相続した実家や空き家をどうするかは、急いで決める必要はありません。ただし、固定資産税・維持管理費・老朽化は時間とともに積み重なります。「売る・貸す・住む・更地にする」の選択肢を比較する前に、まず名義変更(相続登記)を済ませることが先決です。


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よくある質問(FAQ)

Q1. 母が全財産を相続するには、子どもの同意が必要ですか?

A. はい、必要です。相続人全員(母と子どもたち)が参加した遺産分割協議で合意し、遺産分割協議書を作成する必要があります。一人でも欠けると協議は無効になります。なお、遺言書がある場合は遺言の内容が優先されますが、相続人全員が合意すれば遺言と異なる分割も可能です(ケースによります)。

Q2. 相続税の申告は必ず必要ですか?

A. 遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)以下であれば、申告は不要です。ただし配偶者控除や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合でも、申告書の提出は必要です。不動産を含む場合、評価額の計算が複雑なため、税理士への相談をお勧めします。

Q3. 父の名義の口座はすぐ凍結されるの?

A. 金融機関が死亡を知った時点で口座が凍結されます。凍結後は遺産分割協議書や戸籍謄本などの書類を揃えて払い戻し手続きが必要です。なお、2019年の民法改正により、遺産分割前でも相続人一人が一定額(上限150万円、金融機関ごとに計算)まで単独で引き出せる「仮払い制度」があります。詳細は各金融機関または専門家にご確認ください。


免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務・登記に関するアドバイスではありません。具体的なご状況については、司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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