遺言・生前対策

家族信託のデメリットと向かないケース|失敗しないための基礎知識

Bushizo相続相談室(宅地建物取引士)
家族信託のデメリットと向かないケース|失敗しないための基礎知識

「家族信託がいい」と聞いたけど、本当に大丈夫?

「親が認知症になる前に、なにか手を打っておきたい」「実家の管理を子どもに任せたい」——そう考えてインターネットで調べると、必ずといっていいほど出てくるのが家族信託という言葉です。

確かに家族信託は、認知症対策や財産管理の場面で非常に有効な手段です。しかし、「万能な制度」ではありません。設計を誤ったり、ご自身の状況に合わないまま契約してしまうと、思わぬトラブルや余分なコストを招くことがあります。

この記事では、家族信託のデメリットや向かないケースを正直にお伝えします。メリットだけを強調した情報に流されず、本当に必要な対策を選ぶための判断材料としてお役立てください。


家族信託とは?まず仕組みを30秒で確認

家族信託とは、財産の「管理・運用・処分」の権限を信頼できる家族(受託者)に託し、その利益は本人や指定した人(受益者)が受け取る仕組みです。

  • 委託者(例:親):財産を信託する人
  • 受託者(例:子):財産を管理・処分する人
  • 受益者(例:親本人):利益を受け取る人

親が元気なうちに契約しておくことで、認知症になって判断能力が低下しても、子どもが不動産の売却や管理を継続できる点が最大のメリットです。成年後見制度と比べて柔軟に財産を動かせる点も注目されています。


家族信託の主なデメリット6つ

① 相続税の節税効果は基本的に期待できない

家族信託は「財産の管理・承継」を目的とした制度であり、相続税そのものを減らす効果はほとんどありません。信託財産は依然として委託者(親)の財産として課税対象になります。

生前贈与や生命保険を活用した節税と組み合わせたい場合は、別途対策が必要です。なお、2024年からは生前贈与の相続財産への加算期間が3年から7年に延長されており、早めの対策がより重要になっています。

② 設定コストが高い

家族信託の契約書は公正証書で作成するのが一般的で、専門家(司法書士・弁護士)への報酬と公証人手数料が発生します。信託財産の規模や内容にもよりますが、初期費用として数十万円〜100万円程度かかるケースも珍しくありません。

費用項目目安
司法書士・弁護士報酬30万〜80万円程度
公正証書作成費用(公証人手数料)信託財産額により異なる
不動産の信託登記費用数万〜十数万円程度
信託口口座の開設手数料金融機関により異なる

※費用はケースにより大きく異なります。必ず事前に専門家へ確認を。

③ 受託者(管理する家族)への負担が大きい

受託者となる子どもは、信託財産の収支を記録し、帳簿を作成する法的な義務を負います。不動産収入がある場合は確定申告も必要です。「なんとなく実家を管理する」という感覚ではなく、相応の責任と事務負担が生じます。受託者が複数いる場合の意思決定の煩雑さも課題になります。

④ すべての財産を信託できるわけではない

農地・預貯金口座そのもの・年金受給権などは、原則として信託財産にできません。また、信託財産に含めていない財産(信託外財産)については、別途遺言書や成年後見制度での対応が必要になります。「家族信託さえ作ればすべて解決」とはならない点に注意が必要です。

⑤ 身上監護(医療・介護の契約)はできない

家族信託で管理できるのは財産に関することのみです。親が入院するときの医療同意や、介護施設との契約(身上監護)は受託者の権限外です。これらの対応が必要な場合は、別途任意後見制度の利用を検討する必要があります。

⑥ 家族間のトラブルに発展するリスクがある

家族信託に関するトラブルとして多いのが、受託者に選ばれなかった兄弟姉妹との対立です。「なぜあの子だけが財産を管理するのか」という不満が生じやすく、後の遺産分割協議を複雑にすることもあります。また、受託者が信託財産を私的に流用するリスクもゼロではありません。契約内容や受益者の保護条項を丁寧に設計することが重要です。


家族信託が「向かないケース」とは?

デメリットを踏まえると、以下のようなケースでは家族信託が最善の選択肢とならないことがあります。

状況向かない理由代替手段の例
財産が少額・シンプルコストが割高になりやすい遺言書・任意後見
相続税対策が主な目的節税効果がほぼない生前贈与・生命保険活用
家族間の仲が悪いトラブルが拡大するリスク弁護士関与の遺言・後見
認知症が既に進行している契約能力(意思能力)が問われる法定後見制度
信頼できる受託者がいない財産管理が機能しない信託銀行・任意後見

認知症が進んでからでは、家族信託の契約そのものができなくなります。「いつかやろう」と先送りにするほどリスクは高まります。


よくある家族信託トラブルの事例

事例①「登記をしていなかった」

不動産を信託財産に含めた場合、法務局への信託登記が必要です。これを怠ると、第三者に対して信託の効力を主張できなくなります。なお、2024年4月からは相続登記の義務化も始まっており、不動産の名義管理への意識はこれまで以上に重要になっています。

事例②「信託口口座が作れなかった」

信託財産の金銭を管理するには、専用の「信託口口座」が必要ですが、すべての金融機関が対応しているわけではありません。対応していない銀行では口座開設を断られることもあり、事前の確認が欠かせません。

事例③「兄弟が納得していなかった」

親子で進めた家族信託の内容を、他の兄弟姉妹が後から知って紛糾するケースは少なくありません。契約前に家族全員へ内容を共有し、透明性を確保することが、後のトラブル防止につながります。


家族信託か、遺言か、任意後見か——比較まとめ

家族信託遺言書任意後見
認知症対策✕(死後のみ)
財産の柔軟な管理
身上監護
相続税節税
コスト高め低〜中
家族の負担高め低い中程度

どの制度が最適かは、財産の内容・家族構成・認知症リスク・コスト許容度によって異なります。一般的には、複数の制度を組み合わせることで、それぞれの弱点を補い合えます。


「どうすればいい?」と迷ったら、まず相談を

家族信託は正しく設計すれば非常に強力な生前対策ですが、「とりあえず作れば安心」という性質のものではありません。ご家族の財産状況・関係性・将来のリスクをしっかり整理した上で、本当に必要な対策を選ぶことが大切です。

Bushizo相続相談室(品川区天王洲)では、宅地建物取引士を窓口に、司法書士・税理士・弁護士と連携したワンストップ相談に対応しています。「家族信託が自分に向いているか知りたい」「実家の相続をどうすればいいか整理したい」という段階からお気軽にどうぞ。売却を急かすことなく、中立な立場でご状況をお聞きします。品川・大田・港エリアはもちろん、全国の相続不動産にも対応しています。

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よくある質問

Q1. 親が認知症気味なのですが、今から家族信託の契約はできますか?

A. 家族信託の契約には、委託者(親)に契約内容を理解できる意思能力があることが必要です。軽度の認知症であれば公証人や医師の判断のもと契約できるケースもありますが、症状が進むと難しくなります。「まだ大丈夫」と思ううちに早めに専門家に相談することを強くお勧めします。

Q2. 家族信託と成年後見制度は何が違うのですか?

A. 最大の違いは柔軟性です。成年後見制度は家庭裁判所の監督下に置かれ、不動産の売却などに制限がかかることがあります。一方、家族信託は信託契約の範囲内で受託者が柔軟に財産を管理・処分できます。ただし、身上監護(医療・介護の手続き)は家族信託では対応できないため、任意後見との併用が有効な場合もあります。

Q3. 家族信託の費用はどれくらいかかりますか?

A. 信託財産の規模や内容によって大きく異なりますが、司法書士・弁護士への報酬・公正証書作成費用・不動産の信託登記費用などを合わせると、数十万円〜100万円超になるケースもあります。費用対効果を含めて、専門家に見積もりを取った上で判断することをお勧めします。


本記事は一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の法務・税務判断については、司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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