法人が関係する相続の基礎知識|手続きと注意点を宅建士が解説
「法人と相続」──検索する方が抱える疑問とは
「法人が相続人になれる?」「亡くなった父が会社を持っていたが、株式はどうやって相続するの?」「不動産を会社名義で持っていたが、代表者が亡くなったらどうなる?」
「法人 相続」というキーワードで検索する方の背景は、大きく2つに分かれます。
- 法人が財産を受け取る側(法人が遺贈を受けるケースなど)
- 亡くなった方が法人の代表者・株主だった(会社株式や会社名義財産の相続)
結論からお伝えすると、法人自体は相続人にはなれません。 ただし、法人が遺贈によって財産を受け取ることは可能です。一方、故人が会社の株式や不動産を法人名義で保有していた場合は、相続手続きが複雑になりやすく、放置するとトラブルになります。
この記事では、「法人と相続」に関わる場面ごとの基礎知識・手続きの流れ・税務上の注意点を、宅地建物取引士の視点から整理します。
法人は相続人になれない──まず大前提を理解する
民法上、相続人になれるのは自然人(人間)のみです。株式会社・合同会社・NPO法人といった法人格を持つ団体は、相続人の地位を取得することができません。
ただし、遺贈(遺言による贈与)の受取人には法人もなれます。たとえば、「財産の一部を○○財団法人に遺贈する」と遺言書に記載することは有効です。
| 受取方法 | 法人が受取可能か | 根拠 |
|---|---|---|
| 法定相続 | 不可 | 民法887条〜890条(相続人は自然人のみ) |
| 遺贈(遺言による) | 可能 | 民法964条(受遺者に制限なし) |
| 死因贈与 | 可能(ケースによる) | 民法554条 |
法人が遺贈を受けた場合、その法人が公益法人等であれば税制上の優遇措置が適用される場合があります。一方、同族会社などに遺贈する場合は**みなし相続税(相続税法9条の2)**が課税されるリスクもあるため、事前に税理士への相談が不可欠です。
故人が会社の株主・代表者だった場合の相続
相続実務でより多く発生するのが、被相続人(亡くなった方)が中小企業の株式を保有していたケースです。この場合、株式は相続財産として扱われ、遺産分割の対象になります。
非上場株式の評価は複雑
上場株式と違い、非上場株式(同族会社・中小企業の株式)には市場価格がありません。相続税申告では、国税庁が定める「取引相場のない株式の評価方法」(純資産価額方式・類似業種比準方式など)を用いて評価額を算定します。
この評価額は会社の財務状況によっては想定外に高額になることがあり、相続人が自社株を引き継いだだけで多額の相続税が発生するケースも珍しくありません。
法人名義の不動産と相続の関係
故人が個人名義で保有していた不動産は相続財産ですが、法人(会社)名義の不動産は相続財産にはなりません。ただし、その会社の株式が相続財産になるため、株式評価の中に不動産の価値が含まれる形になります。
| 不動産の名義 | 相続財産の扱い |
|---|---|
| 被相続人(個人)名義 | 相続財産として遺産分割・相続税の対象 |
| 法人(会社)名義 | 直接の相続財産にはならない。ただし株式評価に影響 |
| 共有(個人+法人) | 個人持分のみ相続財産。法人持分は株式評価に反映 |
品川・大田・港エリアでは、代々引き継いだ収益不動産を法人化して保有するケースも多く、「不動産は会社名義なので大丈夫」と思っていたら株式評価で多額の相続税が発生した、という相談も寄せられます。
相続手続き上で法人が絡む場面と注意点
1. 代表取締役が亡くなった場合
代表取締役が死亡した場合、会社の代表者の地位は相続されません。法人格と代表者は別物であり、代表者が不在になると会社運営が止まるリスクがあります。早急に後継の代表者選任と登記変更を行う必要があります。
手続きが遅れると、会社名義の不動産の管理や売却もできなくなります。なお、2024年4月から施行された相続登記の義務化により、個人名義の不動産は相続を知った日から3年以内の登記申請が義務付けられました。会社名義の不動産は対象外ですが、会社の役員変更登記は別途必要です。
2. 株式の遺産分割協議
株式は遺産分割協議の対象財産です。相続人が複数いる場合、誰が株式を引き継ぐか明確にしないと、議決権が分散して会社運営が機能しなくなるリスクがあります。
一般的には、後継者となる相続人が株式を集中して取得できるよう、遺産分割協議書を作成します。協議が整わない場合は、家庭裁判所での調停・審判に移行することもあります。
3. 相続税の納税資金確保
中小企業オーナーの相続では、財産の大部分が「自社株式」や「不動産」といった換金しにくい財産で占められることが多く、相続税の納税資金が不足しやすいという課題があります。
対策としては延納・物納・株式売却・会社からの配当なども検討されますが、それぞれに条件・デメリットがあるため、相続発生前からの事前対策(事業承継計画)が重要です。
生前対策・事業承継と2024年以降の制度変更
生前贈与加算が7年に延長(2024年〜)
2024年1月以降の贈与から、相続開始前の生前贈与加算期間が3年から7年に延長されました。後継者へ株式を少しずつ生前贈与して承継する計画を立てている場合、この変更が大きく影響します。
事業承継税制の活用
非上場株式を後継者に贈与・相続させる際に、相続税・贈与税の納税を猶予・免除する「事業承継税制(特例措置)」があります。特例措置は2027年3月末までに特例承継計画を提出していることが要件のひとつで、期限が迫っています。
| 制度 | 概要 | 期限・条件 |
|---|---|---|
| 事業承継税制(特例) | 株式の相続税・贈与税を最大100%猶予 | 特例承継計画の提出期限:2027年3月末 |
| 生前贈与加算 | 相続前7年以内の贈与を相続財産に加算 | 2024年1月以降の贈与から適用 |
| 相続登記義務化 | 不動産相続を知った日から3年以内に登記 | 2024年4月〜。違反は10万円以下の過料 |
これらの制度変更は専門性が高く、適用要件の確認は必ず税理士・司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
「法人×相続」の複雑な問題は早めの相談を
法人が絡む相続は、株式評価・納税資金・事業継続・不動産登記と、複数の専門分野が重なる複合的な問題です。一人の専門家だけでは解決が難しいケースも多く、宅地建物取引士・税理士・司法書士・弁護士が連携して対応できる窓口に相談することが、スムーズな解決の近道になります。
**Bushizo相続相談室(品川広域センター)**では、宅地建物取引士が窓口となり、相続に関わる不動産・株式・法人絡みの案件を、司法書士・税理士・弁護士と連携したワンストップ体制でサポートします。売却を急かすことなく、相談者の状況に合った最善の選択肢を一緒に考えます。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 法人(会社)は相続人になれますか?
A. なれません。民法上、相続人になれるのは自然人(人間)のみです。ただし、遺言による「遺贈」の受遺者には法人もなれます。NPO法人や公益財団法人への遺贈を検討する方も増えています。
Q2. 父が中小企業の株主でしたが、株式の相続税はどのように計算されますか?
A. 非上場株式には市場価格がないため、国税庁の定める評価方法(純資産価額方式・類似業種比準方式など)で評価額を算定します。会社の規模・財務状況によっては高額になるケースもあり、税理士による評価・申告が必須です。
Q3. 会社名義の不動産は相続登記の義務化の対象になりますか?
A. 対象外です。2024年4月施行の相続登記義務化は、個人(自然人)名義の不動産が対象です。法人(会社)名義の不動産は対象外ですが、代表者が亡くなった場合は別途、会社の役員変更登記が必要になります。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律判断・税務判断・登記手続きについては必ず司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。