会社の相続は何をすべきか|株式・事業承継の手続きを基礎から解説
突然の「会社の相続」、何から手をつければいい?
親や配偶者が経営者だった場合、相続の場面では「会社をどうするか」という問題が避けられません。個人の財産(預金・不動産)と違い、会社に関わる相続は株式の評価・名義変更・事業の継続可否など、複数の問題が同時に押し寄せてきます。
「会社を畳むべきか、誰かに継がせるべきか」「株式は誰が取得するのか」「相続税はいくらかかるのか」——こうした問いに直面して途方に暮れている方は少なくありません。
結論からお伝えすると、**会社の相続において最初にすべきことは「被相続人が保有していた株式の確認」と「遺産分割協議の進め方の整理」**です。会社そのものを相続するのではなく、あくまで「株式(持分)」という財産を相続する、という基本的な考え方を押さえることで、手続きの全体像が見えてきます。
「会社の相続」とは何を引き継ぐことなのか
会社は相続の対象にならない。株式が対象
法人(株式会社・合同会社など)は、個人とは別の法的主体です。したがって「会社そのもの」を相続することはできません。相続の対象となるのは、**被相続人が保有していた会社の株式(または持分)**です。
- 株式会社の場合 → 保有していた株式を相続
- 合同会社・合名会社・合資会社の場合 → 定款の定めにより取り扱いが異なる(持分の相続が認められないケースもある)
合同会社などでは、定款に「相続人への持分承継」の特則がない場合、持分が相続されず会社から払い戻しを受けるだけになることもあります。まず定款を確認することが重要です。
株式を相続すると何ができるのか
株式を相続した相続人は、その持株比率に応じて会社の意思決定(株主総会での議決権行使)に参加できます。過半数を取得すれば経営に大きな影響を持ち、3分の2以上であれば特別決議も単独で可決できます。
相続開始後の手続きの流れ
会社の株式を含む相続手続きは、基本的な相続の流れに沿って進みます。
| ステップ | 内容 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| ① 相続開始 | 被相続人の死亡、死亡届の提出 | 死亡後7日以内(死亡届) |
| ② 財産の調査 | 株式・預金・不動産・負債の確認 | なるべく早めに |
| ③ 相続放棄の検討 | 負債が多い場合は家庭裁判所へ申述 | 相続知った日から3か月以内 |
| ④ 遺産分割協議 | 相続人全員で株式の取得者を決める | 期限なし(ただし早めが望ましい) |
| ⑤ 株式の名義変更 | 証券会社または会社の株主名簿を書き換え | 協議成立後速やかに |
| ⑥ 相続税の申告・納付 | 課税遺産がある場合に申告 | 相続開始を知った日から10か月以内 |
株式の名義変更(株主名簿の書き換え)
上場株式であれば証券会社を通じて手続きしますが、中小企業の非上場株式は会社に対して株主名簿の書き換えを請求します。遺産分割協議書や戸籍謄本、印鑑証明書などの書類が必要になります。
株式の相続税評価額はどう計算するのか
非上場株式の相続税評価は、国税庁が定める「取引相場のない株式の評価方法」に従います。会社の規模や業種によって評価方式が変わり、一般的には以下のいずれかが使われます。
| 評価方式 | 概要 | 主な適用場面 |
|---|---|---|
| 類似業種比準方式 | 同種上場企業の株価を参考に算定 | 大会社・中会社 |
| 純資産価額方式 | 会社の純資産額をもとに算定 | 小会社・資産保有型 |
| 折衷方式 | 上記2つを一定割合で組み合わせる | 中会社 |
非上場株式の評価は非常に専門的で、会社の決算書・純資産・配当実績などが評価額に影響します。評価額が高くなると相続税の負担も大きくなるため、早めに税理士へ確認することをお勧めします。
事業承継の3つの選択肢と比較
株式を相続した後(あるいは相続と並行して)、会社をどうするかを決める必要があります。大きく分けると3つの選択肢があります。
① 親族内承継(家族・親族が引き継ぐ)
最も一般的な事業承継の形です。後継者となる相続人が株式を集約し、代表取締役に就任する流れが典型的です。
メリット: 会社の文化や人間関係が維持されやすい
デメリット: 後継者の経営能力・意欲が必要。株式の分散がある場合は遺産分割協議が複雑になる
② 第三者承継(M&A・売却)
経営者の親族に後継者がいない場合、会社を第三者に売却する方法(M&A)があります。従業員の雇用を守りながら売却できるケースもあります。
メリット: 現金化できる。廃業よりも従業員・取引先への影響が少ない
デメリット: 適切な買い手を見つけるのに時間がかかる。情報管理が必要
③ 廃業・清算
後継者もなく買い手も見つからない場合、会社を解散・清算する選択肢もあります。法的な手続きが必要で、負債の整理も伴います。
メリット: 事業に縛られず遺産整理に集中できる
デメリット: 従業員の雇用が失われる。清算手続きに費用と時間がかかる
事業承継税制の優遇措置を見逃さないために
事業承継の負担を軽くする制度として「事業承継税制(非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度)」があります。一定の要件を満たした中小企業の株式承継では、相続税・贈与税の**最大100%の納税が猶予(免除の可能性あり)**されます。
事業承継税制の主な要件(概要)
- 中小企業者に該当すること
- 都道府県知事の認定を受けること(認定経営革新等支援機関の関与が必要)
- 後継者が一定期間、代表者として事業を継続すること
- 特例措置の適用は2027年3月31日までに特例承継計画を提出する必要がある(2024年時点)
この制度は要件が複雑なため、税理士への相談が不可欠です。活用できるかどうかで相続税の負担が大きく変わります。
なお、2024年から相続前の生前贈与について加算期間が3年から7年へ延長されました。株式の生前贈与を行う場合も、このルール変更を踏まえた計画が必要です。
会社の相続で困ったら、専門家に早めに相談を
会社の相続は、一般的な相続よりも関わる専門分野が多岐にわたります。
- 税理士: 株式評価・相続税申告・事業承継税制
- 司法書士: 株式名義変更・会社の役員変更登記
- 弁護士: 遺産分割協議のトラブル・定款解釈
これらをバラバラに相談すると時間も費用もかかります。
**Bushizo相続相談室(品川広域センター)**では、宅地建物取引士が窓口となり、税理士・司法書士・弁護士と連携したワンストップ対応をご提供しています。会社の株式だけでなく、相続に伴う不動産・空き家・実家の整理もまとめてご相談いただけます。売却を急かすことなく、お客様のペースで一緒に考えます。
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よくある質問
Q1. 会社を相続放棄すれば、株式も放棄できますか?
A. 相続放棄をした場合、株式を含む被相続人のすべての財産(プラスもマイナスも)を放棄することになります。「会社の株式だけ放棄する」ことは相続放棄ではできません。特定の財産だけを放棄したい場合は、遺産分割協議で他の相続人に取得してもらう形になります。ただし相続放棄は家庭裁判所への申述が必要で、期限(相続を知った日から原則3か月以内)があります。
Q2. 株式を複数の相続人で分けると、どんな問題が起きますか?
A. 株式が分散すると、経営の意思決定において株主間で対立が生じるリスクがあります。特定の相続人が過半数を持てない場合、株主総会の決議が通らなくなるケースもあります。できる限り一人の後継者に株式を集約するか、株主間契約などで対策を講じることが一般的です。
Q3. 相続した会社に借金があった場合、相続人が返済しなければなりませんか?
A. 会社(法人)の借金は、原則として会社自体の債務であり、株式を相続しただけで相続人が個人的に返済義務を負うことはありません。ただし、被相続人が会社の借入に**個人保証(連帯保証人)**をしていた場合は、その保証債務も相続の対象となり得ます。保証債務がある場合は相続放棄も含めて慎重に検討が必要です。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的として作成しており、特定の事案に対する法務・税務・登記等の個別アドバイスではありません。実際の手続きや判断については、税理士・司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。