相続と所得税の関係を基礎から解説|かかるケース・かからないケース
「相続したら所得税もかかるの?」と不安になっている方は多いはずです。相続税の申告期限(10ヶ月)が迫るなかで、さらに所得税まで意識しなければならないのか——そのモヤモヤを解消するために、まず結論をお伝えします。
相続財産を受け取ること自体には、原則として所得税はかかりません。 ただし「相続に伴って発生するお金の動き」によっては所得税の課税対象になるケースがあります。どこで所得税が生じるのか、具体例を交えながら整理していきましょう。
相続と所得税の基本:なぜ”原則非課税”なのか
所得税は「所得(儲け)」に課税される税金です。一方、相続で財産を取得することは「儲け」ではなく「財産の移転」と整理されており、所得税法上は「非課税所得」に分類されています(所得税法第9条)。
そのため、現金・預金・株式・不動産などを相続で受け取った時点では所得税は発生しません。代わりに課税されるのが「相続税」です。相続税と所得税は別の税金であり、同じ財産に二重にかかることは基本的にありません。
しかし、相続をきっかけに「新たな所得が発生する場面」では所得税の申告・納税が必要になります。どのような場面か、次章から具体的に見ていきます。
所得税がかかる主な4つのケース
① 相続した不動産を売却したとき(譲渡所得)
相続した土地や建物を売却すると、その売却益(譲渡所得)に所得税・住民税が課税されます。これが最もよくあるケースです。
譲渡所得の計算式:
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
ポイントは「取得費」の考え方です。相続で取得した不動産の取得費は、被相続人(亡くなった方)が購入したときの価格を引き継ぎます。購入当時の契約書が見当たらない場合は、売却価格の5%を概算取得費として使うことも認められていますが、この場合は税負担が大きくなりやすいため、書類の確認を丁寧に行うことが重要です。
| 所有期間(相続人が売却する時点) | 税率(所得税+住民税) |
|---|---|
| 5年以下(短期譲渡) | 約39.63% |
| 5年超(長期譲渡) | 約20.315% |
※所有期間は被相続人の取得時から通算されます。
また、相続した空き家(旧耐震の一戸建て)を売却する場合、「相続空き家の3,000万円特別控除」(措置法35条3項)が適用できるケースがあります。適用には一定の要件がありますので、専門家への確認をおすすめします。
② 相続した不動産から家賃収入を得たとき(不動産所得)
亡くなった方が所有していたアパートや賃貸マンションを相続し、引き続き賃貸経営を行う場合、その家賃収入は相続人の「不動産所得」として毎年確定申告が必要です。相続時点から所得税の対象になります。
品川・大田・港エリアなど城南地域には築年数の経った収益物件を相続するケースも少なくなく、「賃料収入があることを知らずに無申告だった」というご相談も実際にあります。相続後の収益物件は早期に収支を整理しておくことが大切です。
③ 被相続人の未確定所得:準確定申告
亡くなった方(被相続人)が、死亡した年に得ていた給与・年金・不動産収入などについては、相続人が代わりに確定申告を行う義務があります。これを準確定申告といい、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内が期限です。
相続税の申告期限(10ヶ月)とは別のスケジュールになるため、見落としがちです。特に会社員や年金受給者であっても、副収入や医療費控除の調整などで申告が必要になるケースがあります。
④ 生命保険・年金形式の保険金を受け取ったとき
生命保険金は受取人・契約者・被保険者の組み合わせによって課税の種類が変わります。
| 契約者 | 被保険者 | 受取人 | 課税の種類 |
|---|---|---|---|
| 被相続人 | 被相続人 | 相続人 | 相続税(みなし相続財産) |
| 相続人 | 被相続人 | 相続人(自分) | 所得税(一時所得) |
| 被相続人 | 被相続人 | 第三者 | 贈与税 |
特に「年金形式で受け取る保険金」は、受取開始後2年目以降の各年分が雑所得として所得税の課税対象になることがあります(最初の年は相続税との二重課税調整あり)。
相続で所得税がかからない主なケース
すべての相続財産に所得税がかかるわけではありません。以下は原則として所得税非課税です。
| 財産の種類 | 所得税の扱い |
|---|---|
| 現金・預金の相続 | 非課税 |
| 株式・有価証券の相続(受取時) | 非課税(売却時に譲渡所得が発生) |
| 不動産の相続(受取時) | 非課税(売却時・収入発生時に課税) |
| 死亡退職金(一定額まで) | みなし相続財産として相続税の対象 |
| 香典・弔慰金(社会通念上の範囲) | 非課税 |
「相続税を払ったのだからもう税金は終わり」と思われる方もいますが、売却や収益発生のタイミングで改めて所得税の問題が生じることを覚えておいてください。
2024年以降の制度変更で注意すべきポイント
相続登記の義務化(2024年4月〜)
2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記を行わないと過料の対象となりました。相続した不動産を売却する際には登記が前提になりますので、早期の手続きが重要です。
生前贈与加算の期間延長(2024年1月〜)
相続開始前の贈与を相続財産に加算する期間が、従来の「3年」から**「7年」**に順次拡大されます(2031年以降は完全に7年ルール適用)。生前に贈与を受けていた場合、相続財産の計算が変わる可能性があり、所得税・相続税の双方への影響を確認する必要があります。
相続した不動産の税務は専門家との連携が重要
相続と所得税の関係は、「受け取り時」「保有中」「売却時」と段階ごとに判断が変わります。特に不動産は金額が大きく、特例の適用可否によって税額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。
Bushizo相続相談室(品川広域センター)では、宅地建物取引士が相続不動産の現状を整理し、提携する税理士・司法書士・弁護士とともにワンストップで対応しています。「売却を急かさない」姿勢で、お客様のペースに合わせた相談が可能です。
相続した不動産の税務・売却・活用についてお気軽にご相談ください。 無料相談はこちら → お問い合わせフォーム / 📞 050-5527-6414
よくある質問
Q1. 相続税を払えば、不動産を売っても所得税はかかりませんか?
A. かかります。相続税と所得税は別の税金です。相続で取得した不動産を売却した際の売却益(譲渡所得)には、所得税・住民税が課されます。ただし、相続税を支払っている場合、一定期間内の売却であれば「相続税の取得費加算の特例」を利用して税負担を軽減できるケースがあります(相続開始の翌日から3年10ヶ月以内の売却が要件)。詳細は税理士にご確認ください。
Q2. 準確定申告を忘れていた場合、どうなりますか?
A. 期限(相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内)を過ぎると、延滞税や加算税が課されることがあります。気づいた時点で速やかに税務署または税理士に相談し、できる限り早く申告・納税を行うことを強くおすすめします。期限後申告でも自主的に行えば加算税が軽減される場合があります。
Q3. 相続した株式を売却した場合の所得税はどうなりますか?
A. 相続で株式を受け取った時点では所得税はかかりませんが、その後売却して利益が出た場合は「譲渡所得」として約20.315%(所得税・住民税)が課税されます。取得費は被相続人の取得価格を引き継ぐため、証券会社の取引履歴などで確認しておくことが重要です。NISA口座の株式を相続する場合は課税口座に移管されるなど別途注意点もありますので、証券会社・税理士に確認してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・法務判断の根拠となるものではありません。具体的なご状況については、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。